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    INTRODUCTION

    「恋の渦」から「水の声を聞く」へ

    昨年、超低予算映画ながら異例のヒット作となった大根仁監督「恋の渦」が、映画界に新風を巻き起こした。そのプロデューサである山本政志が、「恋の渦」で得た収益を全て投入し、本来の監督業に戻り、大森立嗣監督「ぼっちゃん」「さよなら渓谷」で、注目を浴びているプロデューサー村岡伸一郎と強靭なタッグを結成し、「恋の渦」とは全く異なる、またまた斬新な映画を誕生させた。

    神秘的な映像で渇いた心を潤す

    喪失感と閉塞感、混乱と混沌、不信と不安・・・出口が見えない現代・・・。『水の声を聞く』は、”今“を生きる多様な人々が織りなしていく人間模様と、植物・水・風・雲・・・自然から放射される生命力が同じ目線で描かれていく。
    さらに、善と悪、陰と陽、聖と俗・・・,全てが混沌としながら微妙なバランスでスクリーンに存在している。神秘的で力強い映像が、それらを包み込み、観る者の心に水のように浸透し、渇いた魂へ潤いを与えていく。「水の声を聞く」は、閉塞した時代に向けた”魂”の映画だ。

    新時代女優“玄里(ヒヨンリ)”

    日本・韓国・ヨーロッパを舞台にボーダレスな活躍をつづけている彼女は,本作でも日本語と韓国語を駆使し、希望と現実の狭間で揺れ動くミンジョン役を見事に体現。透明感のある美しさの中に強さと儚さを併せ持つ彼女の存在が、この映画に力強さと潤いを与えている。まさに新時代女優の誕生といえる。演技派俳優として幅広く活躍する村上淳、注目の個性派趣里が脇を固め、多くの無名の出演者が醸し出すリアルな演技と融け合って独自の世界観を創りだしている。

    STORY

    東京・新宿コリアンタウン。
    在日韓国人のミンジョンは美奈の誘いにのり、軽くひと稼ぎし、頃合いを見てやめるつもりで巫女を始めた。
    しかし、救済を乞う信者が増え、宗教団体『真教・神の水』が設立され、後戻りができない状況になってくる。

    借金取りに追われる父親、それを追う狂気の追跡者、教団を操ろうとする広告代理店の男、教団に夢を託す女、救済を乞う信者達、ミンジョンは聖と俗の狭間で苦悩し、偽物だった宗教に心が入ってくる。

    やがて、ミンジョンは大いなる祈りを捧げ始める。
    不安定な現代に、“祈り”を捧げる。
    “祈り”によって、世界を救済する。

    いったい何が「本物」で、何が「偽物」なのか?
    大いなる祈りは、世界に届くのか?

    TRAILER

    予告編

    CAST

    主演:ミンジョン役
    玄里(ヒョンリ)

    東京都生まれ。日・英・韓の3カ国語を操るトライリンガル。ウォン・ビン、カン・ドンウォンらを輩出した韓国のShinYong Wook演技学校で学び、韓国、日本、ヨーロッパを舞台に映画・CF・雑誌など、まさにボーダレスな活躍をつづけている。2013年の出演作「ラジオデイズ」が夕張映画祭 ファンタランド賞を受賞。門馬直人監督の「SKY-ハヌル-」がSSFF&ASIA2013 ミュージック Short部門 UULAアワードを受賞するなど、その演技力が高く評価されている。その他出演作に「ジャッジ!」(永井聡監督)、「イン・ザ・ヒーロー」(武 正晴監督)、「STREET FIGHTER ASASSINS FIST」(Joey Ansah監督)ドラマ「八重の桜」「フリーター、家を買う」などがある。本作では、日本語と韓国語を駆使し、希望と現実の狭間で揺れ動くミンジョン役を見事に体現。透明感のある美しさの中に強さと儚さを併せ持つ彼女の存在が、この映画に力強さと潤いを与えている。まさに、新時代女優の誕生だ。

    坂井美奈役
    趣里

    1990年東京都生まれ。2011年ドラマ「3年B組金八先生ファイナル」でデビュー。その後もドラマ、舞台、映画と幅広く活躍。主な作品に映画「おとぎ話みたい」(山戸結希監督、MOOSIC LAB 2013最優秀女優賞受賞)、「ただいま、ジャクリーン」(大九明子監督)、「恋につきもの」(一見正隆監督)、舞台「ザ・フルーツ」(中島淳彦演出)、「カズオ/斜めから見ても真っ直ぐ見てもなんだかんだ嫌いじゃないもの」(倉本朋幸演出)、今秋は空想組曲「無意味な花園」(ほさかよう演出)、Bunkamura25周年記念「ジュリエット通り」(岩松了演出)が控えている。本作ではミンジョンの親友であり、教団を取り仕切る坂井美奈役で個性的な空気を漂わせている。今後が期待される注目株だ。

    赤尾役
    村上淳

    1973年生まれ。大阪府出身。数々のファッション雑誌のモデルを経て93年に橋本以蔵監督「ぷるぷる 天使的休日」で映画初出演。2001年には中江裕司監督「ナビィの恋」、阪本順治監督「新・仁義なき戦い」、廣木隆一監督「不貞の季節」の3作で注目を集め、ヨコハマ映画祭助演男優賞を受賞。その後、石井岳龍監督「生きているものはいないのか」、園子温監督「ヒミズ」「希望の国」、熊切和嘉監督「莫逆家族 バクギャクファミーリア」、 井上淳一監督「戦争と一人の女」など続々と話題作に出演。2014年公開映画には、河瀬直美監督「2つ目の窓」、藤井道人監督「オー!ファーザー」、永田琴監督「シャンティ・デイズ」、姜秀瓊監督「さいはてにて」、風間志織監督「チョコリエッタ」などがある。

    三樹夫役
    鎌滝秋浩

    1965年7月13日生まれ。20代から劇団を中心に役者活動を始め、40代で映画の世界へ。原田眞人監督「自由戀愛」(2004)でスクリーンデビュー。映画出演作に「恋するイノセントマン」「伝染歌」「わが母の記」「M」「リターン」ドラマ出演作に「かなたの子」「リバースエッジ大川端探偵社」公開待機作に「まほろ駅前狂騒曲」などがある。本作には、シネマ☆インパクト受講生の中から選出された。ダメ親父でありながらどこか憎めないミンジョンの父親三樹夫を熟演。

    紗枝役
    中村夏子

    佐賀県出身。フェリス女学院大学文学部日本文学科卒業。音楽活動を経て、2011年より役者に挑戦している。主な出演は、「STUDENTS&TEACHERS」(今泉力哉監督)、「山宿」(吉田浩太監督)、「止まない晴れ」(熊切和嘉監督)、「トーキョービッチ,アイラブユー」(吉田光希監督)等。本作には、シネマ☆インパクト受講生の中から選出された。心に闇を抱えた紗枝役で、妖しい魅力を放っている。

    シンジ役
    萩原利久

    1999年2月28日、埼玉県生まれ。 2008年、CM「LEGOブロック」でデビュー。数多くのドラマ・CMに出演。「週刊子どもニュース」で次男りく役「めちゃ×2イケてるッ!」オカレモンJr.としてバラエティ番組にも出演。近年はドラマでも活躍している。主な作品に「ハガネの女2」「11人もいる!」「幽かな彼女」「変身インタビュアーの憂鬱」「金田一少年の事件簿N」など。本作では、あどけない顔立ちをしながら、大人を相手に悪事を画策する狂気の少年シンジ役を見事に演じきった。

    小宮守役
    松崎颯

    1991年東京生まれ。3歳から7歳までロンドンに、7歳から13歳までロサンゼルスに住む。中学1年生で帰国し、慶應義塾湘南藤沢中等部に入学し、そのまま慶応大学法学部へ進学。2014年卒業。10年間の欧米生活を送っていた為、英語は完璧で、通訳や英語字幕を担当した経験もある。教団に入る事によって、大きく人生の歯車が狂っていく、まじめな青年守役で、初の大役に挑んだ。

    小宮佳恵役
    薬袋いづみ

    20歳より、俳優・演出家 中島陽典氏に師事。『ウミユカバ ヅクカバネ2006』『けいせい仏の原』と、主に舞台を中心に活動。2012年、大原とき緒監督作品『ナゴシノハラエ』『早乙女』、2013年、大森立嗣監督作品『さよなら渓谷』と、最近は映画にも出演している。本作では、孤独な狂気に囚われた母親佳恵役を、憑依したような演技で作品に緊張感を与えている。

    高沢役
    小田敬

    山本にその個性を買われ、映画に引きずり込まれ、最近の山本作品の常連となる。本作で、「聴かれた女」「スリー☆ポイント」に続いて3作目の山本組参加となる。演技は素人だが、他を圧倒する存在感で、独特の空間を創りだす。今回は、難役の変態ヤクザ高沢役で、スクリーンに毒の華を添えている。

    文人役:齋藤隆文
    宮沢裕太役:富士たくや

    宮沢依子役:西尾英子
    俊一役:間部祐介

    茂木奈緒役:高木悠衣
    和子役:かわはらゆな

    笹内役:小松茂孝
    Gee役:リー・マーシャル
    ジュン役:牛丸亮

    STAFF

    監督
    山本政志

    「闇のカーニバル」(1983)が、ベルリン・カンヌ映画祭で連続上映され、ジム・ジャームッシュらニューヨークのインディペンデント監督から絶大な支持を集める。 「ロビンソンの庭」(1987)-ベルリン映画祭Zitty賞/ロカルノ映画祭審査員特別賞/日本映画監督協会新人賞-では、ジム・ジャームッシュ監督の撮影監督トム・ディチロを起用、香港との合作「てなもんやコネクション」(1990)では専用上映館を渋谷に建設、「ジャンクフード」(1997)を全米12都市で自主公開、「リムジンドライブ」(2001)では単身渡米し、全アメリカスタッフによるニューヨーク・ロケを敢行、人気セクシー女優蒼井空そらを主演に据えた「聴かれた女」(2006)は、英、米を初め7カ国でDVDが発売され、2011年には、超インディーズ作品「スリー☆ポイント」を発表、2012?13年は実践映画塾「シネマ☆インパクト」を主宰し、12人の監督とともに15本の作品を世に送り出し、その中から、メガヒット作大根仁監督「恋の渦」を誕生させた。国境やジャンルを越えた意欲的な活動と爆発的なパワーで、常に新しい挑戦を続けている。

    プロデューサー
    村岡伸一郎

    1972年、福岡県生まれ。1995年に長崎で撮影された「ファザーファッカー」にスタッフとして参加。その後、荒戸源次郎に師事。2003年「赤目四十八瀧心中未遂」でプロデューサーを務め、 毎日映画コンクール日本映画大賞、ブルーリボン賞作品賞など、その年の映画賞を総なめする。 2004年「ゲルマニウムの夜」を製作。ロカルノ国際映画祭、東京国際映画祭のコンペティション部門に正式出品するなど、国内外で高い評価を得る。公開は「ゲルマニウムの夜」を上映するために映画館“一角座”を東京国立博物館内に建設し、1年間のロングラン上映を行う。 2012年、秋葉原無差別殺傷事件をモチーフにした映画「ぼっちゃん」にプロデューサーとして参加。日本プロフェッショナル大賞作品賞を受賞。 同年製作の「さよなら渓谷」はモスクワ国際映画祭コンペティション部門審査員特別賞を受賞。また、両作品を対象として、大森立嗣が第56回ブルーリボン監督賞を受賞。

    ラインプロデューサー
    吉川正文

    1974年生まれ。立命館大学卒業。映写技師を経てフリーの宣伝配給として「ラザロ」(井土紀州監督)「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)「コロッサル・ユース」(ペドロ・コスタ監督)「ミツバチの羽音と地球の回転」(鎌仲ひとみ監督)「サウダーヂ」(富田克也監督)などを手掛け、2012年にシネマ☆インパクトに参加、全15本の制作を担当している

    撮影
    高木風太

    関西在住。「君と歩こう」(石井裕也監督)「堀川中立売」(柴田剛監督)などの撮影を務め、2013年「壁の中の子供達」(野口雄也監督)で第9回CO2 Panasonic技術賞を受賞。シネマ☆インパクトでは、山下敦弘監督「ありふれたライブテープにFocus」、熊切和嘉監督「止まない晴れ」を手掛ける。今、最も注目されている新進気鋭のカメラマンである。

    照明
    秋山恵二郎

    1980年生まれ映画美学校6期生。卒業後、テレビなどの照明助手をしながら、自主映画などにも携わる。横浜聡子監督「ジャーマン+雨」伊月肇監督 短編「トビラを開くのは誰?」三宅唱監督「playback」、山下敦弘監督 テレビドラマ「エアーズロック」等の作品がある。

    美術
    須坂文昭

    87年、「帝都物語」美術アルバイトを経て90年、山本政志監督「熊楠」で装飾部に参加。93年、「エンジェルダスト」から、「水の中の8月」、「ユメノ銀河」、「エレクトリッ クドラゴン8万ボルト」、「五条霊戦記」等の石井岳龍監督作品に参加。近年、「私の奴隷になりなさい」、「また必ず会おうと誰もが言った」、「無花果の森」などの美術を担当。

    録音
    上條慎太郎

    長野県安曇野市出身。映画録音技師/助手として「祖谷物語」(蔦哲一朗),「トーキョービッチ,アイラブユー」(吉田光希),「2つ目の窓」(河瀬直美)など。サウンドエンジニア/プログラマーとして藤本隆行(DUMBTYPE),真鍋大度(Rhizomatiks),蓮沼執太などのプロジェクトに関わる。

    録音応援
    光地拓郎

    映画美学校卒業後、東京芸術大学大学院映像研究科に入学。2011年より録音技師として活動。 主な作品として『恋の渦』(13・大根仁監督)、『モーニングセット、牛乳、春』(13・サトウトシキ監督)、『WHO IS THAT MAN!?あの男は誰だ!?』(13・沖島勲監督)

    編集
    山下健治

    1972年4月2日生まれ。福岡県出身。日活芸術学院卒業後フリーの編集助手として数々の作品に携わる。「ヤッターマン」、「十三人の刺客」、「愛と誠」「喰女-クイメ-」など,一連の三池崇史監督作品を担当している。

    音楽
    Dr.Tommy

    日本のクラブ音楽シーン黎明期から現在まで、常にその先端、中心部にいて、シーンを創り上げ支えている一人。DJ、音楽プロデューサー、作詞、作曲、編曲まで手掛けるコンポーザー、リミキサー、トラックメーカーなど様々な顔を持つ。多くのCM作品の他、プロデュース&コンポーズ作品やリミックスなどの作品も多く、DJとしても国内外問わず活躍している。

    PRODUCTION NOTE

    シネマインパクトとは?

    山本政志主宰の“実践映画塾”。

    2012年は、大森立嗣、瀬々敬久,鈴木卓爾,深作健太、ヤン・イクチュン、橋口亮輔、山下敦弘、松江哲明、いまおかしんじ、熊切和嘉、廣木隆一、大根仁、山本政志の各監督が受講生と共に計15本の長・中・短編映画を製作。大森立嗣監督「2.11」、ヤン・イクチュン監督「しば田と長尾」がロッテルダム映画祭に参加、さらに「しば田とながお」は、韓国のアシアナ国際短編映画祭で最優秀国内作品賞を受賞,いまおかしんじ監督「集まった人たち」は、今年の香港映画祭、サハリン映画祭に選出。「恋の渦」は,国内での異例のヒットに留まらず,今年の香港,ウディネ(イタリア)、フランクフルト、テラコッタ(イギリス)、エジンバラの映画祭で上映され、まだまだ世界に渦を巻き起こしている。
    2013年は、大森立嗣、タナダユキ,林海象、行定勲、阪本順治,三木聡、矢崎仁司。冨永昌敬。松永大司、平波亘各監督によるワークショップが開講された。

    プロローグ

    2013年1月、13人の監督が作品を作る実践映画塾“シネマ☆インパクト”の一環として「水の声を聞く-プロローグ-」(31分)が撮影された。タイトルのとおり、いずれ完成されるであろう「水の声を聞く」の前半30分を撮影した短編だ。この時迄、シネマ☆インパクトの企画で2本の短編を完成させた山本政志の「短編を撮る事におもしろ味を感じなくなったから」という、思いからだった。しかしながら、この時点では脚本はプロローグ部分のみで、全体は完成していなかった。さらに、出資が望める内容ではないので、自己資金で製作する方向なのだが、制作費は無い。こうして、水の声を聞く」は、取りあえずのスタートを切った。

    山本クラスの10人

    実践映画塾“シネマ☆インパクト”。主宰の山本のクラスは、他の監督の作品に出演できなかった受講生のみが、無料で参加できるクラスだった。その中に、大根仁監督にその才能を高く評価されながらも、「恋の渦」の“チャラい”キャストイメージに合わず、参加できなかった玄里(ヒョンリ)がいた。山本は、玄里から受け取ったインスピレーションを元に脚本を書き起こした。また、ミンジョンの父親役鎌滝秋浩,紗枝役中村夏子、文人役齋藤隆文、宮沢夫婦役の富士たくやと西尾英子、俊一役間部祐介、奈緒役高木悠衣、和子役かわはらゆな、笹内役小松茂孝も同クラスからの参加で、リハーサルの過程で各々の役が振り分けられた。彼らのしっかりした演技と匿名性からくる独自の実在感が作品をより豊かなものにしている。

    韓国・済州島

    済州島の民間宗教の祈りの“場”である“堂”探しが、山本単独で行われた。現在、済州島の民間宗教は廃れていて、なかなか情報が得られない。“堂”という名前さえ知らない人が、ほとんどだ。それでも善良なタクシー運転手の執拗な聞き込みのおかげで、十数カ所の“堂”をロケハンできた。2013年2月、ラストの韓国・済州島シーンの撮影が行われた。撮影の高木風太、主演の玄里と監督の山本、インディーズならではの、僅か3名の撮影隊だった。民間宗教の祭り“ヨンドゥン・ク”とロケハンで決定していた大木のある“堂”の撮影は、驚くほどの順調さで終了した。

    森と滝

    いよいよ、本格的な撮影準備が始まる。最初に取りかかったのは滝探し! 本作の世界観を伝えるのに最も重要なロケ地であり、山本ワールドを表現するのに欠かせない要素だ。東京近辺から長野、静岡、山梨、新潟、群馬、栃木、福島、・・徐々に探す範囲を広げながら滝探しは続いた。思いのほか滝探しは難航した。奈良の大台ケ原、熊野、屋久島、青森の白神山系などを周囲に推されるが予算にはまらない。山本は、大台ケ原に飛んでいきそうな気配を漂わせ始めた。このままでは本当に奈良・熊野まで行かなければならない。そんな、ある日、山梨に行っていた監督から、撮影場所の滝を決定したと、一報が入る。スタッフ一同ほっとした。・・・しかし監督の次の言葉を聞いてその気分は吹っ飛んだ。「あくまで滝はね。森はここじゃないな・・・」と。 映画で一連の流れにある滝と森、当然同じところでやるのと別場所になるのは、経費も労力も雲泥の差がある。それをあっさりと切り離したのだ。おそるべし山本政志。結局、滝は山梨、森は日光で撮影することとなった。

    巫女

    俳優陣はひと月以上前から、毎日のようにリハーサルが行なわれた。特に主演の玄里は他にも巫女の所作や歌と踊りの練習を、準備中に知り合った本物の韓国の巫女さん鄭賢珠の指導で行った。玄里の巫女っぷりは、短期間で鄭賢珠から太鼓判を押されるほどになった。しかし、本番では、「インチキ宗教」だからと、せっかく練習を重ねた儀式や所作を監督から一部改悪され、さらには出演までさせられるなど、鄭賢珠にとっては散々な映画体験?だった。

    美術

    山本の未完の大作「熊楠KUMAGUSU」で装飾部に参加した須坂文昭が20数年ぶりに山本作品に参加し、美術を担当。予算に見合わない、監督の無謀な要求に、知恵と体力で応えた。大きくなった新“真教・神の水”のシーンの撮影は、ある会社の1フロアを長期間借りて行われた。壁やドアが作られ、柱などの色味も変えられ、フロアは一変した。最後の紗枝の新教団のシーンは、某地域の集会所を、“芝居の練習”という名目で1日だけ借り、大量の装飾物が持ち込まれ祭壇が作られた。さすがに、電動ノコの音に驚いた集会所の職員からストップがかかるが、村岡プロデューサーの心にしみる説得で何とかピンチを乗り切った。また、山本初期作品の柱、三池崇史監督「十三人の刺客」で日本アカデミー賞最優秀美術賞を受賞した林田裕至、崔洋一監督「血と骨」で同じく日本アカデミー賞最優秀美術賞を受賞した磯見俊裕のアカデミー賞コンビが、デザイン・装飾などで多大な協力をしているのも、特筆ものだ。

    ゲリラ撮影

    今回の最大の難関は、渋谷“百軒店”での撮影だと思われた。三樹夫が、変態ヤクザ高沢に追われ逃げ込む、路地裏の飲屋街。ロケハンの際、あまりにその筋の人が多い風景に、一瞬でこの場所をロケ地で選んだ山本と、「この辺り、本当に多いですね。おもしろいですよ」と、笑顔で同意したプロデューサーの村岡。山本は、過去に大阪・あいりん地区、歌舞伎町、香港、バンコク、ニューヨークの裏町、東京ベイエリア、恵比寿の高級ホテルのロビーと、枚挙のいとまの無い数のゲリラ(無許可)撮影を行っている、スリルマニアだ。その中でも今回の撮影は、A難度。行き交う裏サイド人の数の多さに加え、山本が決定した撮影場所は、その筋の経営による“風俗情報店”横の、人が一人やっと入れる程の狭い路地や風俗店の呼び込みやキャッチで最も賑やかな街の入口と、さらに難易度を上げている。撮影が間近に迫る頃、山本は、別のロケハンで知り合ったそっちサイドの男に連絡した。「百軒店で撮影するんで協力を頼む」、単に挨拶程度の連絡のつもりだったが、これが意外な展開を生んだ。その男の所属団体が、百軒店界隈を担当していて、彼はそこの取締役級だったのだ。それは、肩すかしを食ったような撮影現場だった。百軒店は、どこもかしこも撮影自由。おまけに、通りかかるその筋の男達からは。「ご苦労様です」と、激励を受ける。取締役の男が所属団体に話を通してくれたのだった。最大の難関と思われたシーンは、最大の楽勝シーンになってしまった。こうなると、少し物足りない監督とプロデューサーだった。

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